サムライスピリッツ
−ナコルル転生編−


___2人は程なくして、バスにのり青年の家を目指した。
もちろん、ナコルルはバスや車などは乗ったことはない。
バスを目の前にして、きょとんとしているナコルルの手を引いて
青年はバスに乗り込んだ。

バスの中は暖房が効いていて暖かい。 ついついうとうとして
しまうような独特の暖かさが広がっている。

車内には夜だからなのか、他の客も数えるぐらいしか乗っていなかった。

どうも落ち着かないナコルルをよそに青年はナコルルに窓際の席を薦め、
自分はその横に座った。
ナコルルはバスの乗ると言う初めての経験。青年の様子をしきりにうかがう。

「どうしたの?ナコルルさん」

「あの、これ動くんですよね?」

ナコルルは心配そうな面もちで青年に尋ねた。

「ははっ、心配しないで」

心配そうなナコルルをよそに、青年は明るく振る舞う。

しばらくして車内放送が流れ、エンジン音と共にバスはゆっくりと
走り出した。
ナコルルはやはり落ち着かない様子で、じっと無言で前を見つめていた。

見かねた青年は、一息ついて目をとじ、そして固まっているナコルルに
小さく話しかけた。

「あ、ナコルルさん街明かりがきれいでしょう?」

ナコルルは青年の指さす方向を見つめる・・・。

「ほら、あの道が今僕とナコルルさんが歩いてきた道で・・・」

 ―青年はナコルルを落ち着かせようと必死な様子でいる―

ナコルルは自分に気を使ってくれている、青年の、その気持ちを強く感じた。

そして、窓の外から青年の方に目を移し、ナコルルは青年を見つめながら

「本当に、優しい方なんですね・・・」

小さな声で、青年につぶやいた。

青年は一瞬驚いた表情を見せたが、恥ずかしそうに頭に手を当てて
笑ってみせた。

「そ・・そう? ほ、ほらそんな事より・・」

ナコルルは動揺している青年を見て、ニコリと微笑みを浮かべた。

「本当・・きれいですよね」

車窓に流れる、雪景色に浮かび上がる街明かりを見つめた。
ネオンの光、すれ違う車のライト・・・
ナコルルは静かに見つめていた・・・。


 落ち着きを取り戻したナコルルに青年も安心した。
青年はしばらく、目を閉じた。今日起きた不思議な出来事が
自然と頭に思い出される。

本当に不思議な出来事・・何故か、このナコルルという女の子と
突然出会ったこと・・

夢では無い。現に今、隣にナコルルが座っている。

―何故、自分とナコルルが出会ったんだろう―

目を閉じていると色々なことを考える。
彼女が、青年に話してくれた事・・・
普通に聞いたら、どうしても信じられない話し・・
でも、彼女は間違いなく本当のことを言っているようだ。
彼女は、嘘なんてつくような人では決してない。

そして、今まで辛い思いをしてきたこの女の子に自分がしてやれること・・・
何をしてあげれば良いのか・・
様々な想いが頭に浮かんでは消える。
車窓に流れる、街明かりのように・・・


 ・・と、その時、ナコルルは青年の肩に頭を預けてきた。

(ナ、ナコルルさん!?)

自分の顔のすぐ横にあるナコルルの顔・・青年は驚き、
思わずナコルルの方をゆっくりと、恐る恐る(?)のぞき込んだ。


そこには、いつの間にか安らかに寝息をたてているナコルルがいた・・。
使命を背負った少女の顔とは違う、優しい寝顔・・・。

「あ、いつの間にか眠ってる・・・」

ナコルルにとって、今日は色々なことがいっぱい有りすぎて
疲れたのだろう。

「しばらくこのままにして置いてあげよう」

青年はナコルルの寝顔を見つめ、ほんの少し微笑んだ・・・。


バスは光の中をゆっくり流れていく。
ナコルルの心の中のように優しく、そしてゆっくりと・・・。



つづく